こどもを守るクラブ運営の基準が、
大きく変わります
2026年12月25日施行。「日本版DBS」だけではなく、研修、早期把握、相談、調査、被害児童の保護、配置の見直しまでを含む新しい安全管理制度です。
学校や保育所だけでなく、一定の要件を満たす学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール等も国の認定制度の対象になります。新体操クラブにとっても、身体接触、個人指導、更衣室、撮影、SNS、遠征などを「先生の良識」だけに委ねない仕組みづくりが問われます。
問題が起こりにくく、選手が声を上げやすく、起きたときにこどもを守れる仕組みがあるかです。
2026年12月25日施行のこども性暴力防止法と新体操クラブの安全管理
この法律は「性犯罪歴を調べる法律」だけではない
こども性暴力防止法の正式名称は、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。2024年6月19日に成立し、同月26日に公布。2026年12月25日に施行されます。
本体は「未然防止 → 早期把握 → 相談 → 調査 → 被害児童の保護・支援 → 再発防止」を、組織として回すための仕組みです。
犯罪歴がない人による初回の加害や、刑事裁判に至らなかった不適切行為にも備えるため、日常観察、相談体制、事実調査、研修、服務規律などを組み合わせる設計になっています。
8月の記事公開後に、制度準備がさらに具体化しました
施行まで約3か月半。こども家庭庁は9月に入り、ガイドライン、準備ガイド、システム関連資料を相次いで更新しています。
施行ガイドラインを改訂
研修をいつまでに受講させるかが明確化されました。原則は児童等に接する業務へ従事する前。認定申請時にすでに従事している者については、申請時に研修受講を証する書類が必要です。
横断指針を改訂
教育・保育等の事業者全体に共通する性暴力防止の考え方が更新され、こどもへの相談窓口周知用資料なども公開されています。
施行準備・システム運用が具体化
義務事業者用準備ガイドVer.1.1が公開され、「こまもろうシステム」関連資料も更新。事業者情報や対象従事者の登録・犯罪事実確認に向けた実務準備が具体化しています。
認定申請後に新たに従事することが決まった人まで「申請前に研修済み」である必要はなく、原則として実際に児童等に接する業務へ従事するまでの間に研修を受講させればよいことが明確になりました。一方、認定申請時点ですでに従事している者については、申請時に研修受講を証する書類の提出が必要です。
令和8年度の事業者向け全国説明会が各地で開催されており、9月10日の浜松会場、11月6日の東京会場(オンライン同時配信予定)など、施行直前の実務説明が続きます。最新日程はこども家庭庁の公式ページで確認してください。
学校の教員だけでなく、こどもと継続的に接する大人全体へ
教員による性暴力対策から、日本版DBSの検討、民間教育を含む横断的な安全管理へと段階的に制度が整備されてきました。
教員性暴力防止法が成立
教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律が成立。学校教員だけでなく、こどもと接する幅広い職種へ対策を広げる課題が明確になりました。
日本版DBSの検討方針
政府の基本方針で、教育・保育施設やこどもが活動する場で働く際に、性犯罪歴等を確認する仕組みの検討が示されました。
有識者会議で制度設計を議論
対象事業、確認対象犯罪、情報管理などの論点が整理されました。
法律成立
国会で成立し、6月26日に令和6年法律第69号として公布されました。
施行ガイドライン・Q&A・研修教材を整備
対象事業、犯罪事実確認、研修、相談・調査、情報管理等の実務が具体化しました。
施行直前の実務資料を更新
8月21日に横断指針、9月2日に施行ガイドライン、9月4日に義務事業者用準備ガイドVer.1.1が更新・公表され、9月8日には「こまもろうシステム」関連資料の掲載も更新されました。
施行
学校等の義務対象では制度運用が開始。一定の民間教育保育等事業者は、要件を満たした上で国の認定を受ける仕組みが始まります。
なぜ習い事も重要なのか――支配性・継続性・閉鎖性
対象業務や制度設計を理解する鍵は、こどもと大人の関係に生じやすい三つの性質です。
支配性
指導、評価、配役、進路、選抜などを通じて、大人がこどもより優越的な立場になりやすいこと。
新体操では:代表選考、大会メンバー選抜、レベル評価、進路推薦。
継続性
日常的、定期的、または反復継続して同じこどもと接する機会があること。
新体操では:週1〜複数回、数年単位で同じコーチから継続指導を受ける。
閉鎖性
第三者の目が届かない状況が生じ得ること。SNSやコミュニケーションアプリ等でのオンライン接触も含み得ます。
新体操では:個別指導、更衣室、DM、送迎、大会遠征・合宿。
第三者の目に触れない状況は、従事者1人に対して児童等が複数いる場合も含み得ます。SNS等のオンライン上のやり取りも判断要素になります。
学校等は「義務」、習い事等は一定要件のもとで「認定」
事業の法的位置づけによって、義務対象と認定対象に分かれます。
学校設置者等
学校、幼稚園、認定こども園、認可保育所、一定の児童福祉施設・障害児支援等。法律上、安全確保措置を講じる義務があります。
民間教育保育等事業者
学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール等。一定の要件を満たす事業は、国の認定を受けることができます。
認定事業者マーク「こまもろう」
国の認定を受けた学習塾やスポーツクラブ等は、認定事業者マークを表示できます。認定前の事業者が自由に表示できるマークではありません。
認定後は、犯罪事実確認だけでなく、研修、相談、調査、採用・配置、情報管理などを組織として運用する必要があります。
「チェックして終わり」ではない、8つの安全管理
以下を一つの連続した安全管理システムとして考える必要があります。
服務規律・未然防止
不適切な行為、身体接触、個人連絡、撮影等について、禁止・注意事項と報告ルートを明確にします。
従事者研修
原則として児童等に接する業務へ従事する前に研修を受講。認定申請時点の現職者は、申請時に研修受講を証する書類が必要です。
早期把握
日常観察、面談、アンケート等を通じ、こどもの変化や不適切行為の兆候を早い段階で把握します。
相談体制
こどもや保護者が、加害の疑いがある本人以外へ相談できる内部・外部のルートを整えます。
事実調査
疑いが生じた場合、こどもの安全と二次被害防止に配慮しながら、客観的な事実確認を進めます。
保護・支援
被害が疑われるこどもと、加害が疑われる従事者の接触を避け、必要な支援機関等と連携します。
犯罪事実確認・防止措置
対象従事者の特定性犯罪歴を確認し、おそれが認められる場合は対象業務へ従事させないための措置を取ります。
厳格な情報管理
犯罪事実確認に関する情報は、アクセス権限、利用目的、保管、廃棄、漏えい防止等を厳格に管理します。
問題が起きにくい環境をつくり、兆候を見逃さず、声を上げられ、発生時に守れることまで含みます。
犯罪事実確認では、何を、どこまで確認するのか
「特定性犯罪」の有罪判決歴について、一定期間内に該当するか否かを国が確認する仕組みです。
| 区分 | 確認対象となる期間 | ポイント | 例 |
|---|---|---|---|
| 拘禁刑・実刑 | 刑の執行終了等から20年 | 長期の確認期間が設定されています。 | 不同意性交等、不同意わいせつ等 |
| 拘禁刑・執行猶予 | 裁判確定から10年 | 執行猶予でも確認対象です。 | 特定性犯罪に該当する場合 |
| 罰金刑 | 刑の執行終了等から10年 | 一定の条例違反等も対象になり得ます。 | 痴漢、盗撮、未成年者への淫行等 |
法律上の「特定性犯罪」の有罪判決
対象期間内に特定性犯罪事実該当者に当たるかを確認します。
全ての不適切行為や将来の「危険性」
不起訴、示談、組織内での不適切行為、初回の加害リスク等が犯罪歴確認だけで全て分かるわけではありません。
法の中心は、当該従事者をこどもと接する対象業務に従事させないことです。現職者では配置転換等も想定され、実際の対応では労働関係法令や就業規則との整合が必要です。
スポーツクラブ・ダンススクール等は、5つの要件を満たすと「民間教育事業」の認定対象になり得る
こども家庭庁は、法律上の明確な定義がない事業の例として、学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール等を挙げています。新体操クラブも運営形態によっては該当し得ます。
一方、指導者が1人又は2人だけのクラブでは、「教授者3人以上」の要件を満たさず、民間教育事業の認定対象にならないケースが想定されます。最終的な該当性は各クラブの実態に応じて確認してください。
認定要件を満たさない小規模クラブでも、補助・身体接触、更衣、相談、撮影、SNS、個別指導、送迎、遠征・合宿等について自主ルールを整え、安全性と透明性を高めることはできます。
新体操では「必要な補助」と「身体・関係の境界線」を両方言語化する
接触自体を一律に否定するのではなく、目的、部位、方法、本人の意思、第三者からの見え方、記録まで含めて透明にすることが重要です。
補助・柔軟・身体接触
触れる部位と目的を先に説明し、拒否や中止を伝えられることを共有します。痛みを伴う強制柔軟を「伝統」や「根性」で正当化しません。
1対1の個別指導
ドア、窓、見学可能性、入退室、保護者への共有等を検討し、完全な密室や関係の閉鎖化を避けます。
更衣室・衣装フィッティング
指導者の立入り条件、ノック、撮影禁止、同性スタッフ、衣装調整時の同意や保護者同伴の扱いを明確にします。
SNS・DM・個人LINE
連絡手段を公式アカウントや保護者を含む連絡網へ集約し、夜間の個別連絡、私的相談、消えるメッセージ等のルールを決めます。
写真・動画・SNS掲載
撮影目的、保存期間、共有範囲、掲載同意、撤回方法を分けて管理します。レオタード姿や柔軟姿勢は特に慎重に扱います。
大会・遠征・合宿
宿泊部屋、入浴、更衣、送迎、夜間連絡、引率者数、緊急連絡先、体調不良時の対応を事前に共有します。
外部コーチ・トレーナー
実績や知名度だけで安全を判断せず、身体接触、撮影、個人連絡、相談・報告のルールを外部指導者にも共有します。
代表選考・大会メンバー
評価権限を持つコーチとの関係では選手が断りにくいことを前提にし、安全上の相談を評価と切り離せる第三者ルートを用意します。
体型・体重・月経・食事
羞恥や恐怖を使った体重管理、公開計測、食事制限を避け、健康上の懸念は医師・管理栄養士・心理職等につなぎます。
「触らないこと」だけが安全なのではなく、新体操クラブで考えたい身体の境界線
必要な補助を、説明可能で、拒否可能で、第三者から見える形にする。
DBSを導入しても、ゼロリスクにはならない
制度を過大評価しないことが、むしろ安全性を高めます。
「前科なし=安全」ではない
初めて加害を行う人には過去の性犯罪歴がありません。犯罪事実確認だけで安全を証明することはできません。
刑事裁判に至らない情報は全部見えるわけではない
相談、示談、内部処分、不適切なSNS等、犯罪事実確認の対象外となる問題もあります。
任意認定の民間事業には「認定/非認定」の差が生まれる
認定マークは安全への取組を示す一つの指標になり得ますが、認定要件を満たせない小規模クラブまで一律に低評価するものではありません。
ルールがあっても、相談できなければ機能しない
代表コーチ本人しか相談窓口がない構造では、問題が起きた際に制度が機能しません。外部性の確保が重要です。
新体操クラブが今から見直したい20項目
認定を申請する予定があるクラブだけでなく、認定対象外の小規模クラブにも使える自主点検です。
- 児童対象性暴力等・不適切行為の定義を共有した
- コーチ・スタッフ向けの服務規律を文書化した
- 補助・柔軟時の身体接触ルールを整理した
- 選手が接触を拒否・中止できることを明示した
- 1対1指導の透明性を確保した
- 更衣室・衣装調整時の立入りルールがある
- 個人SNS・DM・LINEのルールがある
- 撮影・保存・掲載の同意を分けて管理した
- 大会遠征・合宿・宿泊の行動基準がある
- 送迎時に1対1になる場合のルールがある
- 外部コーチにもクラブの安全方針を共有する
- 採用・依頼時に安全方針と服務規律を説明する
- 選手本人が相談できる方法がある
- 保護者が相談できる担当者を明示した
- 代表コーチ以外の相談先を確保した
- 疑いが生じた際の報告ルートがある
- 事実確認中の接触回避手順を決めた
- 記録・個人情報の管理責任者を決めた
- 体型・体重・食事・月経に関する対応方針がある
- 年1回以上、安全方針を見直す日を決めた
「問題が起きにくく、声を上げやすく、起きても守れるクラブ」へ。
法律の最低ラインだけでなく、新体操固有の「クラブ安全方針」が必要になる
新体操には、柔軟や技の補助、レオタードと更衣、体型・体重への働きかけ、長時間練習、代表選考、大会遠征・合宿など、一般的な学習塾とは異なる場面があります。
そのため、法律の条文だけを置くのではなく、「自分たちのクラブでは、日常のどの場面を、どのルールで安全にするのか」まで具体化する必要があります。新体操安全コーチ資格サイトでは、身体・心・尊厳を守るための指導方針を8領域・52項目で点検できる自主チェックリストを公開しています。
法律が定める共通基盤
犯罪事実確認、研修、早期把握、相談、調査、保護・支援、防止措置、情報管理。
新体操現場で具体化する安全方針
補助・柔軟、個別指導、更衣、SNS、撮影、体重管理、遠征・宿泊、外部コーチ、選考、保護者説明、相談ルート等。
法律を知ったら、次は「自分のクラブ」を52項目で点検する
「安全な新体操クラブをつくるための指導方針チェックリスト|身体・心・尊厳を守る全52項目」では、心理的安全性、身体の境界、健康・栄養・体重、相談と報告、運営の透明性まで確認できます。
制度を「知っている」だけで終わらず、
日々の指導を安全にアップデートする。
こども性暴力防止法が示しているのは、犯罪歴の確認だけでなく、未然防止、早期把握、相談、研修、こどもの尊厳を守る組織づくりの重要性です。
新体操安全コーチ資格 ベーシックプログラムでは、解剖学、整形外科学、トレーニング理論、栄養学、メンタルヘルス、ハラスメント、コーチング、摂食障害、ストレッチ、姿勢、クラス構成などを全12講義で学びます。
制度を知る
こども性暴力防止法、日本版DBS、相談・研修・調査などの背景を理解する。
クラブを点検する
52項目で補助・更衣・SNS・体重管理・遠征・相談体制などを見直す。
指導そのものを学ぶ
身体・心・未来の安全を、医学・心理・栄養・コーチング等と結びつけて実践する。
新体操安全コーチ資格および本サイトの安全チェックリストは、国の認定制度、犯罪事実確認、個別の法的判断を代替するものではありません。
こども性暴力防止法と新体操クラブのFAQ
Q1. 新体操クラブは、2026年12月25日から全て犯罪歴確認をしなければなりませんか?
いいえ。学校や認可保育所などは法律上の義務対象ですが、学習塾、スポーツクラブ、ダンススクール等の民間教育事業は、一定の要件を満たした上で国の認定を受ける仕組みです。認定自体は任意です。
Q2. 個人で運営する小さな新体操クラブも認定を受けられますか?
民間教育事業の要件の一つに、技芸又は知識の教授を行う者が3人以上という要件があります。指導者が1人又は2人だけのクラブは、この要件を満たさない場合があります。
Q3. 「3人以上」は毎回3人のコーチが練習会場にいなければいけませんか?
いいえ。事業全体として教授を行う者が3人以上いればよく、常時3人が同じ会場にいる必要はありません。
Q4. 犯罪事実確認で確認される期間はどのくらいですか?
特定性犯罪について、拘禁刑の実刑は刑の執行終了等から20年、執行猶予は裁判確定から10年、罰金刑は刑の執行終了等から10年です。
Q5. 不起訴や示談、クラブ内だけで問題になった行為も犯罪歴確認で分かりますか?
いいえ。犯罪事実確認は、法律で定める特定性犯罪の有罪判決に関する制度です。全ての不適切行為を把握する制度ではありません。
Q6. 犯罪歴が確認されたら必ず解雇しなければなりませんか?
自動的に一律解雇する制度ではありません。こどもと接する対象業務に従事させないための措置が中心で、現職者では配置転換等も想定されます。
Q7. 新体操の補助や身体接触は法律で禁止されますか?
一律に禁止する法律ではありません。ただし、目的・方法・本人の意思・第三者性・記録などをクラブのルールとして明確にすることが重要です。
Q8. 認定を受けていない新体操クラブは危険ということですか?
いいえ。認定要件を満たさない小規模クラブもあります。実際の相談窓口、身体接触やSNSのルール、撮影同意、個別指導、遠征・宿泊時の安全管理を確認することが大切です。
根拠・参考資料
法律・制度に関する記述は、2026年9月9日時点で公表されているこども家庭庁・国会の一次資料を中心に整理しています。
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」公式ページ — 法律、ガイドライン、Q&A、準備ガイド、ひな型、研修教材、システム関連資料。
- こども性暴力防止法施行ガイドライン(2026年9月2日改訂) — 研修受講時期、認定情報の公表、監督等の整理を更新。
- こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」 — 民間教育事業の要件、3人要件、認定、犯罪事実確認等。
- こども家庭庁「横断指針」(2026年8月改訂) — 教育・保育等を横断する性暴力防止の基本的な考え方。
- 令和8年度 こども性暴力防止法に関する事業者向け全国説明会 — 施行直前の事業者向け説明会。
- 衆議院「令和6年法律第69号」 — 法律条文。
本記事は2026年9月9日時点の公表資料に基づく一般的な教育・情報提供です。個別の新体操クラブが認定対象になるか、特定の従事者が犯罪事実確認の対象になるか、具体的な雇用・配置措置が適法か等は、事業の実態や契約関係によって異なります。必要に応じて、こども家庭庁、所轄行政機関、弁護士・社会保険労務士等へ確認してください。