「子どもの居場所」は、子どもが決める。こども家庭庁の指針から、新体操教室が学べること。
新体操教室は、演技や手具の技術を学ぶ場所です。そして、子ども自身が安心して過ごせると感じるなら、大切な「居場所」にもなり得ます。こども家庭庁が示した指針や2026年度の支援事業を、成長期の子どもの声、身体と心の安全、地域とのつながりから考えます。
まず、子どもがどう感じているのかを知る。
「子どもにとっての居場所」を、社会全体で考える取り組みです。
こども家庭庁は、子ども・若者が安心して過ごせる場所や人とのつながりを増やすため、「こどもの居場所づくりに関する指針」をもとに、自治体や地域団体の活動を支援しています。
この指針が大切にするのは、「ここが自分の居場所だ」と感じるかどうかは、子ども本人が決めるという考え方です。学校や児童館だけでなく、塾や習い事も、子どもにとって居場所となる場合があると示されています。
出発点に
を決定
継続
安心も見る
2023年、国は「居場所づくりの指針」を決めました。
子どもが安心して過ごせる環境を、地域全体で支えるための政策です。
こども家庭庁は2023年12月22日、「こどもの居場所づくりに関する指針」を閣議決定しました。閣議決定とは、国の政策として政府が考え方を正式に決めることです。
背景には、地域のつながりの変化や、子どもを取り巻く悩み・生活上の問題の複雑化があります。家庭や学校は大切な場所ですが、そこでの人間関係が難しくなったときも、別の人や活動とのつながりを持てることが重要です。
国が目指すのは、施設の数を増やすことだけではありません。子どもが自分で選べる多様な場所や時間、人との関係を、地域の力で育てていくことです。
地域のさまざまな大人と場所が、子どもの成長を支える。
大人が「ここは居場所だ」と決めるのではありません。
国は、子ども本人の感じ方を中心に置いています。
同じスタジオでも、「友達に会えて楽しみ」と思う子もいれば、「毎回、失敗するのが怖い」と感じる子もいるかもしれません。大人から見た良い教室と、子どもが安心して過ごせる場所は、いつも一致するとは限りません。
国の指針では、建物だけでなく、音楽や活動の時間、先生や仲間との関係、オンラインのつながりなども、居場所になり得るとしています。
その子がどう感じているかを知る。
居場所は成長や人間関係によって変わることもあります。子どもが辞めたいと感じたり、別の活動を選んだりすることも、本人の意志として丁寧に受け止めたいところです。
子どもが抱く思いは一人ひとり違うため、指導者が「絶対にこの教室が必要だ」と決めつけないことが大切です。
「ふやす・つなぐ・みがく・ふりかえる」。
国が示す4つの視点。順番や優先順位はなく、互いにつながっています。
ふやす|選択肢を増やす
身近な地域にいろいろな活動があること。新しい施設をつくるだけでなく、すでにある場所を生かす考え方も含まれます。
つなぐ|利用しやすくする
どんな場所があるかを知らせ、交通・費用・情報・気持ちの面で参加しにくい子にも目を向けます。
みがく|よりよい環境へ
子どもの声を聴き、安心できるか、危険はないか、望む関わり方になっているかを見直します。
ふりかえる|確かめて改善する
参加者数やイベントの回数だけでなく、子ども自身がどう感じたかを振り返ります。
出典:国の指針の概要版 ↗
「居たい」「行きたい」「やってみたい」。
大人の希望より先に、子どもの言葉に耳を傾けます。
居たい
失敗しても安心していられる。誰かに認められていると感じられる。
行きたい
自分からその場所へ行きたいと思える。無理に通うことを強いられていない。
やってみたい
新しいことに挑戦したくなる。自分の希望を口に出せる。
国は、指針を発表するだけで終わっていません。
2026年度も、自治体が居場所づくりを進めるための支援事業や、地域の人・団体をつなぐコーディネーターの事業が案内されています。
政策の基本となる考え方を閣議決定。子どもの声を聴くことを中心に据えました。
自治体・住民・団体をつなぐコーディネーターの配置等を支援する事業を開始。
居場所づくりの支援体制強化やコーディネーター配置の実施・交付要綱を公開。
こどもの居場所づくり支援体制強化事業
地方自治体が、地域の居場所づくりを進める体制を整えるための事業。実践例や要綱が公開されています。
コーディネーター配置等支援
自治体や地域団体の活動をつなぐ人材を支援し、子どもが多様な居場所に出会える環境を目指します。
こども家庭庁は、災害時の居場所や小学生の朝の居場所づくりも政策として扱い、各地の取組事例や動画・パンフレットを公開しています。
2026年度の支援体制強化事業について、公式ページには「2025年度からの繰越分」の要綱が掲載されています。コーディネーター配置等支援事業には2026年度の実施・交付要綱があります。年度・申請主体・対象経費は必ず各事業の原資料でご確認ください。
学校・福祉・地域支援と、新体操教室の違い。
同じように子どもと関わっていても、制度上の役割は同じではありません。
| 活動の場 | 主な役割や位置づけ | 新体操教室が学べること |
|---|---|---|
| 学校・児童館など | 教育や子どもの活動を支える公共的な役割。学校には学校の制度や義務があります。 | 子どもが安心して話せる関係、相談につながる仕組み。 |
| 自治体の居場所事業 | 自治体や委託先等が事業ごとの目的・要件に沿って運営します。 | 参加しにくい子への配慮、複数の地域資源とのつながり。 |
| 福祉・相談の専門機関 | 専門資格や制度に応じて、家庭や子どもの困難に対応する機関があります。 | 抱え込まず、必要な人や機関へつなぐ姿勢。 |
| 民間新体操教室 | 手具・身体表現・運動・芸術を教える場。公的居場所支援事業と自動的に同じ制度の対象にはなりません。 | 技術指導に加え、子どもの声、安心、参加しやすさを考える。 |
習い事も、子どもの居場所になり得る。
この点は、こども家庭庁の指針に明記されています。
新体操教室は本来、身体表現と手具の技術を学ぶ場所です。練習を通じて上達し、大会での演技や音楽を楽しみ、ともに作品をつくる。そうした時間の中で、家庭や学校とは違う自分でいられる子どももいます。
国の指針は、塾や習い事のような活動でも、子どもがそう感じるなら、結果として居場所になり得ると説明しています。だからこそ、新体操教室が子どもの日常で果たす役割を、技術指導とは違う視点からも見つめ直すことができます。
ただし、長く通っているから必ず居場所であるとは限りません。選手選考、身体への評価、友達との比較、先生の言葉などが、子どもにとって負担になる場面もあります。
「その子は、安心してここにいられるか」。
芸術性を追求することと、子どもの尊厳を守ることは対立しません。新体操を教える専門性を大切にしながら、相手の感じ方も確かめることができます。
地域の新体操教室と行政が、つながる可能性。
国は、地域にある活動や人材を生かすことを重視しています。
地域の取り組みを知る
自治体が公開する子どもの居場所マップや地域活動の紹介を確認する。教室に関係する連携の機会がないかを探してみます。
活動をわかりやすく伝える
誰が参加できるのか、費用や日時はどうか、見学や相談は可能か。初めての家庭にも伝わる情報を用意します。
他分野と交流する
学校、文化施設、地域の活動団体など、目的が異なる人たちとも交流し、必要なときに頼れる関係を作ることができます。
得意なことを持ち寄る
音楽や身体表現の体験、地域行事での発表など、教室の専門性を地域へ分かち合う方法を検討できます。
無理のない継続方法を考える
無料のイベントだけに頼らず、運営資金、教師の負担、安全管理を含め、長く続けられる形を探します。
子どもの声を聞き直す
地域の大人が考えた計画だけで進めず、実際に参加する子どもが望んでいることを確認します。
新体操の指導で、子どもの気持ちを確かめる。
以下は国の公式指導基準ではなく、SDAが考えた例です。
うまくいかなかった演技
ジャンプやピボットがうまくできなかった日も、本人の存在や努力を認める言葉をかけられているでしょうか。
個人と団体の関係
団体練習で意見が言えない子や、集団より落ち着いた練習を望む子の気持ちを確認していますか。
大会・選手選考を迷うとき
選手選考や大会への参加は、大人の期待だけでなく本人が望んでいることや不安を聞けていますか。
柔軟補助と身体接触
柔軟の補助や姿勢の修正は目的を説明し、痛み・怖さ・不快感があればすぐに中断できるでしょうか。
発育や感覚の違い
成長の速さ、体格、感覚の特性などに合わせて、技術習得や参加の方法を変えていますか。
休みたい・辞めたいと言われたら
続けることだけを成功とせず、休養や別の活動を選ぶ本人の意思も尊重できるでしょうか。
演技の上達と、安心して参加できることを両立する。
ここからは、こども家庭庁の公式な競技指導基準ではなく、新体操安全コーチ資格事務局が考えた活用例です。
柔軟練習の「痛い」を止まる合図にする
痛みを我慢することが上達の条件になっていないでしょうか。本人の表情や声を確かめ、補助を止められる関係をつくります。
選手選考が、居場所を失う経験にならないように
選手に選ばれなかった日でも、指導を受ける機会や仲間との関係が失われないように説明と配慮を行います。
全員の声を聞ける団体練習へ
動きが揃うことだけでなく、役割への不安、衝突、孤立を言葉にできるか確かめます。責任を一人に押しつけないことも大切です。
衣装・更衣・撮影の境界を明確にする
レオタード姿の撮影や動画共有は用途・公開範囲を説明し、個人端末での撮影や私的連絡に頼らない仕組みを整えます。
費用・移動・体験機会を考える
用具代、大会費、遠征費、交通手段が参加の壁になることもあります。できる範囲で選択肢と相談方法を示します。
一つの教室だけで抱え込まない
行政のこども担当、学校、相談機関、地域の活動団体などを知り、状況に応じて保護者と協力して専門家へつなぎます。
「居場所」を考えることと、子どもを守ること。
安心できる環境は、優しい言葉だけではつくれません。
国の指針は、子どもの声を聴くことだけでなく、子どもの権利を守ることや、行政と民間が役割に応じて連携することも大切にしています。
民間新体操教室では、本人の意向に加え、身体接触の説明、写真や動画の取り扱い、一対一指導、ハラスメントの防止、悩みを話せる相談先などを見直すことができます。
できること:無理に聞き出さない
子どもが話したくないことを強く聞き出さず、意思を尊重します。困っている様子があれば相談できる方法を知らせます。
できること:専門家へつなぐ
虐待や大きな危険が疑われる場合は、教室だけで調べたり解決しようとせず、適切な相談機関に相談します。
小さな教室でも、まず4つから始められます。
大きな事業を始める必要はありません。
子どもの声を聴く
「楽しい?」「嫌なことは?」だけでなく、答えやすい聞き方や、話したくない自由も大切にします。
選べる機会をつくる
見学、大会・発表会への参加方法、相談手段など、できる範囲で選択肢を用意します。
教室の安全を点検
言葉、身体接触、撮影、困ったときの連絡先を、先生同士でも確認します。
定期的にふりかえる
参加人数や実績に加え、子どもの変化や気持ちを確認して教室の運営を見直します。
上記はSDAによる提案であり、こども家庭庁の公式チェックリストや義務項目ではありません。
子どもの視点から考える、20の問い。
教室の合否を決めるものではなく、自分の指導を振り返るための問いです。
次の20項目は、こども家庭庁の指針から着想を得てSDAがまとめたものです。答えを一度に出す必要はありません。
- 子どもが教室をどう感じているか、知ろうとしているでしょうか。
- 上達やコンクールの結果だけで、その子を評価していないでしょうか。
- うまくいかなかった日も、安心して帰れる言葉をかけられているでしょうか。
- 「嫌だ」「怖い」「今日は休みたい」と言いやすいでしょうか。
- 子ども自身の「やってみたい」を聞けているでしょうか。
- 大会や選手選考について、本人の希望を確認できているでしょうか。
- 友達と過ごすことを望む子も、一人でいたい子も尊重できているでしょうか。
- 身体接触や撮影について、本人が断れる方法を用意していますか。
- 参加費や移動の問題など、教室に通いにくい事情へ目を向けていますか。
- 成長や環境が変わった子どもの気持ちを、以前のままだと決めつけていませんか。
- 先生だけで抱えず、困ったときに相談できる先を知っていますか。
- 地域のなかで、教室が持つ役割を技術指導以外の言葉でも説明できますか。
- 柔軟を補助するときに、事前の説明と本人が断れる方法を用意していますか。
- 大会で結果が出なかった日でも、安心してクラスに戻れるでしょうか。
- 団体演技での役割を、子ども一人に無理に背負わせていませんか。
- 怪我や疲れがある子どもが、休む選択をしやすい雰囲気ですか。
- レオタード・着替え・写真や動画について、子どもの意向とプライバシーを守れていますか。
- 体格や発育の違いを、人前で比較する言い方を避けていますか。
- 大会費や遠征費が負担になる家庭にも、相談方法を示していますか。
- 教室に来なくなった子どもを責めず、本人の選択を尊重できていますか。
よくある質問。
国の制度と、教室での取り組みを混同しないために。
国の指針は、新体操教室に直接適用されますか?
指針は国の政策上の考え方で、通常の民間新体操教室に新しい認定や資格取得を一律に義務づけるものではありません。一方、習い事なども該当する部分について考え方を踏まえることが期待されています。
新体操教室も国の「居場所」として認定されますか?
この指針そのものに、民間新体操教室を自動的に認定する仕組みはありません。地域の事業に参加する場合は、その自治体が定める別の条件を確認します。
レッスンで厳しく教えることは、すべて悪いのでしょうか?
そういう意味ではありません。技術の指導や挑戦には厳密さも必要ですが、侮辱、恐怖、無理強いなどと区別し、子どもの意思と安全を守ることが大切です。
子どもが「ここは居場所ではない」と感じたらどうすれば?
まず本人の話を聞き、理由を決めつけないことです。関係や環境を改善できる場合もあれば、別の活動がその子に合う場合もあります。
こども家庭庁の支援事業には、個人教室も申請できますか?
事業により対象・窓口・申請主体が異なります。主に自治体の体制整備を支えるものもあり、個人教室が直接助成を受けられると約束するものではありません。
子どもの話をどこまで先生が聞いてよいですか?
気持ちを受け止めることはできますが、虐待や深刻な悩みの聞き取り・支援を教室だけで抱え込むべきではありません。安全を確保し、必要な専門機関へ相談します。
国の資料を教室の研修に使ってよいですか?
公開資料を読んで学ぶことはできます。配布、転載、二次利用は資料ごとの著作権・利用条件を確認し、国の正式認定や監修があるかのように表示しないでください。
最初に何をしたらよいでしょうか?
子どもの声を聞く方法、断る・相談する方法、写真や身体接触の説明、ふりかえりの機会を一つずつ整えることから始められます。
大会や団体練習で厳しく指導することは、居場所づくりと両立しますか?
技術を丁寧に教えることと、侮辱・恐怖・無理強いとは別です。目標を明確にしつつ、痛みや不安を伝えられること、納得できる説明があることを大切にします。
新体操教室が行政の居場所事業に参加するとき、まず確認することは?
自治体の募集条件、運営主体、保険、指導者の研修、個人情報の取扱い、事故時の連絡・責任分担、費用と継続方法を確認してください。通常の教室営業とは別の取り決めが必要な場合があります。
「東京から地域へ。地域から全国へ。」
行政の取り組みを知り、地域の先生と子どもの未来へ。
国は、子どもの居場所を家庭や学校だけに限らず、地域全体で考える方向へ進んでいます。それは、地域に根づく新体操の教室が持つ意味を見つめ直す機会でもあります。
毎日のレッスン、発表会、少しの会話。指導者が積み重ねてきた時間の中には、技術や成績だけでは測れない価値があります。
だからこそ、子ども本人の視点を忘れずに、学校や行政、地域のさまざまな活動とつながる可能性を考えていきたいと思います。
支援で教室を守り、
社会とのつながりで、地域の可能性を広げる。
新体操安全指導者資格®の教育ライブラリでは、国や自治体の施策を、民間教室に一律の義務として押しつけるのではなく、先生方が子どもとの関わり方や地域での役割を学ぶための資料として紹介していきます。
こども家庭庁の公式資料。
政策の内容・事業の対象・申請条件は必ず原資料で確認してください。
- こども家庭庁「こども・若者の居場所づくり」 ↗
政策の全体像、事例、今後の関連資料
- 「こどもの居場所づくりに関する指針」本文 ↗
2023年12月22日閣議決定の政策文書
- 「こどもの居場所づくりに関する指針」概要版 ↗
居場所の考え方と4つの視点の要約
- 「こどもの居場所づくりに関する指針」解説書 ↗
政策の背景と実践の考え方
- 「こどもの居場所づくり支援体制強化事業」 ↗
2026年度の実施・交付要綱など
- 「こどもの居場所づくりコーディネーター配置等支援事業」 ↗
2026年度の実施・交付要綱、事例集
- 「こどもの居場所づくり」広報啓発資料 ↗
こども・おとな向けの動画やパンフレット
- 国・地方公共団体の「こどもの居場所づくり」支援施策一覧 ↗
自治体等の施策を調べるための入口
公的情報の確認日:2026年10月16日。国や自治体の募集内容、年度、運用は変更されることがあります。
子どもが安心して成長できる教室を、地域の先生とともに。
新体操安全コーチ資格は、成長期の身体や怪我、心理的な安全、保護者との関わり方などを学ぶ民間の教育プログラムです。国の居場所づくり事業とは別の取り組みですが、地域で子どもに向き合う先生の判断力を支えます。
SDAの民間教育プログラムは、国の認定やこども家庭庁との提携を意味しません。