本記事は2026年10月16日までに公表された防災資料を参考に作成した教育資料です。地震の発生時には、気象庁・自治体・消防や警察・施設管理者の最新情報と現場の安全を優先してください。
新体操教室の地震・震災対策練習中の安全確保、体育館・大会・遠征先での避難、保護者への引き渡し、再開判断まで
地震は、普段の教室だけでなく、公共体育館、大会会場、合宿先でも突然起こります。手具を置いて頭を守ること、全員を確認すること、安全な避難と引き渡しを判断すること。国の防災情報をもとに、新体操の現場で何を準備し、どう行動するかを整理しました。
2026年10月最新版:最初に押さえる地震・震災対応の基本
震度や被害数字だけを見るのではなく、「今いる場所で次に何が起こり得るか」を判断します。
守る順番は、命・人数・情報・引き渡し・再開
緊急地震速報や揺れを感じたら、まず身の安全を確保します。揺れの最中に出口へ走る、保護者へ電話する、荷物を取りに行く、鏡や照明を確認する行動は後回しです。揺れがおさまってから、点呼、負傷、火災、建物、周辺の危険、避難情報を順に確認します。
地震調査研究推進本部が南海トラフ地震の長期評価として公表している南海トラフM8~M9クラスの地震の30年以内の発生確率は、計算方法により「60~90%程度以上」または「20~50%」です。国の説明では、防災対策上は高い方の値を強調することが望ましいとしています。この数字は発生日や今月の危険度を予測するものではなく、10月7日の定例評価とも矛盾しません。地震本部の2026年1月更新、数値の伝え方についての手引きをご参照ください。
身を守る
負傷確認
周辺確認
引き渡し
本記事は、気象庁、内閣府、消防庁、文部科学省、厚生労働省、通信事業者等の公的・公式情報を、練習会場運営へ置き換えて整理しています。
速報後は数秒で行動する
緊急地震速報から強い揺れまでの時間は短く、震源に近い場所では間に合わない場合もあります。音を聞いて考えるのではなく、決めた言葉で即座に動きを止める訓練が必要です。
強い揺れが再び来る前提
最初の揺れだけで終わるとは限りません。建物へすぐ戻る、割れ物を素手で片付ける、設備確認のため一人で奥へ入ることを避けます。
沿岸部は津波を別に判断
強い揺れ、長い揺れ、津波警報・注意報、自治体の避難指示がある場合は、連絡や荷物より避難を優先します。海や川の様子を見に行きません。
高層階は長周期地震動に備える
高層建物では、ゆっくり大きく長く揺れ、家具や音響機器が転倒するだけでなく移動することがあります。気象庁の緊急地震速報(警報)は、震度に加えて長周期地震動階級3以上が予想される場合も発表対象です。震度だけで高層階の危険を判断しません。
通信はつながらない前提
一斉メール、公式サイト、SNS、災害用伝言ダイヤル171、web171、紙の連絡先を組み合わせます。教室が使う基準電話番号と確認順を平時に共有します。
揺れ以外の危険も重なる
火災、停電、断水、猛暑、寒さ、道路損傷、交通停止、避難所の混雑が同時に起こり得ます。備蓄と休講判断は複合災害を前提にします。
先に結論:新体操教室の防災は「止める・守る・数える・判断する・つなぐ」
①演技や手具の動きを止める、②コーチを含む全員の頭と命を守る、③人数と負傷を確認する、④留まるか避難するか判断する、⑤保護者・自治体・専門家へつなぐ。この順序を崩さないことが、混乱を小さくします。
コーチは、選手を守る責任を一人で背負うのではありません。責任者、点呼担当、救護担当、情報担当、保護者連絡担当を決め、コーチ自身の負傷や家族の被災も想定して、誰か一人がいなくても動く仕組みにします。
最新の防災知識を、練習会場運営へ置き換える6つの視点
一般家庭の防災だけでは足りません。多人数、未成年者、鏡、音響、送迎、練習再開を含めて考えます。
1. 一度目で終わるとは限らない
強い揺れが再び起こる可能性を考え、片付けや点検は出口を確保し、靴、手袋、ヘルメット等を使って短時間で行います。
2. 震度だけを見ない
津波、長周期地震動、土砂災害、火災、道路被害、停電などが重なる可能性があります。所在地、階数、建物、周辺環境ごとに危険を確認します。
3. 通信はつながらない前提
全家庭へ個別に電話する計画では破綻します。一斉配信、公式サイト、SNS、171・web171、紙の連絡先を組み合わせます。
4. 未成年者を急いで帰さない
道路、交通、火災、津波、保護者宅の安全が確認できなければ、移動そのものが危険です。安全な待機と本人確認を伴う引き渡しを優先します。
5. 外見が無事でも休講できる
鏡にひびがなくても、天井、照明、電気、ガス、避難経路、周辺道路、スタッフの安全が未確認なら再開しません。休講は安全管理上の判断です。
6. 季節の健康リスクも災害
停電した室内、車中待機、片付け作業では熱中症や低体温、脱水、血栓の危険があります。季節に応じた水分、保温・冷却、休憩、換気を準備します。
2026年10月時点で押さえる「後発地震情報」と遠地津波
情報は地震の発生を断定する予知ではありません。一方で、発表されてから運営方法を考え始めるのでは遅いため、休講・継続・避難・保護者連絡の判断を平時に決めます。
南海トラフ地震臨時情報
「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「調査終了」などのキーワードで発表されます。「巨大地震注意」では日頃の備えを再確認し、すぐ避難できる態勢を整えます。「巨大地震警戒」では、事前避難対象地域を含め自治体の呼びかけに従います。
北海道・三陸沖後発地震注意情報
千島海溝・日本海溝沿いの巨大地震の想定震源域、またはその想定震源域に影響を与える外側のエリアでMw7.0以上の地震が発生し、発表基準を満たすと判断された場合に発表されます。一定精度のMwの推定には典型的には地震発生後2時間程度を要します。2025年12月8日の青森県東方沖の地震と、2026年4月20日の三陸沖の地震に伴う実際の情報発表・防災対応を踏まえ、2026年7月にガイドラインが改訂され、7月28日付で改訂概要と防災対応事例集が公表されています。特別な注意の呼びかけは原則1週間で、地震の発生を予知する情報ではありません。
揺れのない遠地津波と交通停止
海外の大地震などでは、日本で強い揺れがなくても津波警報等や交通機関の運休により帰宅困難者が生じます。2026年1月改定の国のガイドラインは、遠地津波と大規模集客時の対応を新たに整理しました。
情報が発表されたときの5つの運営確認
平時の準備:発災後に考えなくてよい状態をつくる
最も有効な防災は、揺れている最中に必要な判断を減らすことです。
地域リスクを確認
自治体ハザードマップで、津波、洪水、土砂災害、液状化、火災延焼、避難場所を確認します。
建物情報を確認
築年、耐震、階数、避難階段、非常口、管理会社、ガス・電気の遮断位置を記録します。
最大在室人数を計算
選手、保護者、きょうだい、スタッフを含む「最も混む時間」の人数で備蓄します。
役割を複線化
責任者が不在・負傷でも動けるよう、各役割に主担当と副担当を置きます。
連絡手段を3系統
一斉メール・サイト等のオンライン、171等の災害用、紙名簿のオフラインを用意します。
引き渡しルール
保護者・代理人の氏名、関係、本人確認、記録、連絡不能時の待機方針を登録します。
中止基準を文章化
震度だけでなく、警報、避難情報、建物、交通、ライフライン、スタッフ体制で決めます。
実際に体を動かす
警報音を流し、鏡から離れる、点呼する、別経路で避難する訓練を行います。
新体操教室特有の危険を、揺れる前に減らす
広く見える練習会場でも、壁面・天井・移動物には大きな危険があります。
| 設備・場所 | 起こり得ること | 平時の対策 | 発災時 |
|---|---|---|---|
| 壁面鏡 | 割れ、脱落、破片の飛散 | 施工・固定状態の確認、飛散防止、鏡前を安全スペースにしない | 正面と破片が届く範囲から離れる |
| 可動式の鏡・器具 | 転倒、走行、挟まれ | 使用しない時は固定し、キャスターをロック | つかまらず距離を取る |
| 可動式の手具棚 | 転倒、滑走、手具の落下 | 保管場所と転倒防止を確認し、避難通路に置かない | 支えにせず、距離を取る |
| 照明・スピーカー | 吊り物の落下、ケーブル断線 | 専門業者による固定、落下防止ワイヤー、定期点検 | 真下から離れ、再点灯・再使用を急がない |
| 天井 | 天井材、点検口、空調部品の落下 | ひび、たわみ、異音の点検、管理会社との連絡経路 | 中央が常に安全とは限らない。状況を見て退避 |
| 受付・棚 | 本、トロフィー、プリンター、モニターの落下 | 重い物を下へ、扉ロック、家具固定、避難路から移動 | 棚から離れ、受付へ取りに戻らない |
| 更衣室 | ロッカー転倒、閉じ込め、点呼漏れ | ロッカー固定、非常灯、扉が塞がれない配置 | 揺れ後に担当者が声をかけて確認 |
| 音響・電気 | ショート、発煙、再通電火災 | 延長コードの整理、感震ブレーカー検討、遮断位置表示 | 異臭・煙・破損時は使用せず遮断 |
| 出口・廊下 | 荷物や家具で閉塞、避難者の集中 | 常時幅を確保、複数経路、非常口表示、鍵の管理 | 揺れの最中は殺到せず、収まってから誘導 |
| 足元 | 裸足・薄いシューズで破片を踏む | 人数分の厚底靴または緊急履物を出入口近くへ | 破片確認後、履物を着けて移動 |
新体操の教室・体育館・大会会場で、危険になる場所
ここからは、公的な防災対策を参考にSDAが新体操の練習環境に置き換えた具体例です。国が新体操専用の設備基準を定めたものではありません。
手具棚・器具ラック
フープ、クラブ、ボール、リボンなどの保管棚が揺れで倒れたり、中身が落下したりしないように固定します。揺れの最中に手具を拾わず、体と頭を守ります。
体育館の天井・照明
高い天井、吊り下げ式照明、バスケットゴール、空調機器、スピーカーなどが落下する可能性を想定します。広いフロアの中央が必ず安全とは限りません。
床・マット・避難用の靴
裸足や薄い練習用シューズでは、割れたガラスや落下物で足を傷つけるおそれがあります。避難用の履物を確保し、通路に手具やマットを積まないようにします。
大会会場の多人数避難
演技順を待つ選手、観客席の保護者、コーチ、大会スタッフの位置を想定します。会場の避難誘導責任者と集合場所を事前に確認し、勝手に再入場しません。
更衣室と控室
ロッカーや衣装ケースが転倒しないか、避難口が塞がれないかを確認します。点呼はフロアだけでなく、更衣室、控室、トイレまで行います。
遠征先・宿泊施設
出発前に宿泊先・体育館のハザードマップ、避難先、最寄りの津波避難施設、集合方法、引率人数を確認します。移動途中での連絡先も確保します。
学校・公共体育館の管理者
教室側で判断できない建物の安全について、学校や施設管理者の指示を優先します。避難所に切り替わった場合は練習会場として使用しません。
保護者と選手の居場所
個人競技・団体競技で集合時間が異なる場合も、在室者と移動中の選手を把握します。引率者だけで判断を抱えず、あらかじめ決めた連絡手段を使います。
備蓄:帰宅できない選手とコーチがいる前提で計算する
家庭用の非常袋ではなく、「最大在室人数」と「待機時間」で量を決めます。
水・食料
- 飲料水
- アレルギー表示の明確な食品
- 乳幼児・高齢者にも使える食品
- カセットコンロは換気と火災に注意
- 紙コップ・使い捨て食器
トイレ・衛生
- 携帯トイレ・凝固剤
- 大型ごみ袋・防臭袋
- トイレットペーパー
- 手指衛生用品
- 生理用品・おむつ
- マスク・ウェットシート
安全・救護
- ヘルメット・防災ずきん
- 厚底靴・軍手・耐切創手袋
- 救急用品・止血材
- AEDの位置確認
- 毛布・アルミシート
- 笛・反射ベスト
情報・電源
- 乾電池式ラジオ
- 複数のライト
- 大容量モバイルバッテリー
- 充電ケーブル各種
- 紙の地図・連絡先
- 電池を使わない時計
暑さ・寒さ
- 冷却材・うちわ
- 経口補水用品
- 防寒具・雨具
- 温湿度計
- 遮熱・換気用品
- 季節ごとの入れ替え
個別配慮
- 服薬情報と緊急連絡先
- アレルギー・持病の確認
- 補聴・視覚・発達上の配慮
- やさしい日本語の掲示
- プライバシー確保用品
- 子どもが落ち着く小物
連絡・引き渡し・役割分担を、名簿と一緒に整える
連絡先があるだけでは不十分です。通信不能時のルールまで決めます。
最低限の役割
- 統括:避難・待機・119・休講を判断
- 点呼:名簿と場所を照合
- 救護:負傷者の観察と応急手当
- 情報:気象庁・自治体・施設情報を確認
- 連絡:一斉連絡と171等の伝言を更新
- 引き渡し:本人確認・時刻・署名を記録
名簿に追加する情報
- 保護者の複数連絡先
- 代理引き取り者と本人との関係
- アレルギー・持病・服薬
- 配慮が必要な移動・コミュニケーション
- 災害時に帰宅させない方針への同意
- 情報発信先と基準電話番号
通信手段は優先順位を決める
発災直後の60秒:演技を止め、頭と命を守る
緊急地震速報を聞いてから強い揺れまでは、数秒から数十秒です。説明ではなく、反射的に動ける短い指示を使います。
「止まって」「低く」「鏡から離れて」「頭を守って」「動かない」。揺れの最中に出口へ走らせず、鏡、窓、照明、スピーカー、棚、移動式手具棚・可動式器具の周囲から離します。
「止まって。走らない」
「低くなって。鏡と窓から離れて」
「バッグか腕で、頭と首を守って」
「揺れがおさまるまで動かない」
鏡と窓の正面を避ける
横へ数歩動く余裕がある場合に限り、安全スペースへ低い姿勢で移動します。走りません。
丈夫な机がなければ
バッグ、マット、腕で頭と首を保護し、落下物の少ない位置で低くなります。
可動式の手具棚を支えにしない
手具棚、移動式の器具、固定状態が不明な設備は倒れたり滑ったりする可能性があります。
コーチも頭を守る
コーチが立って全体を見続ける必要はありません。安全な姿勢から短く声を出します。
エレベーターを使わない
揺れの後に避難する場合は、建物管理者の情報を確認し、安全な階段を使います。
長く揺れることを想定
揺れが続く間は身を守る行動を続け、いったん収まっても再び強く揺れる可能性を考えて、落下物や転倒物の近くへすぐ戻りません。
揺れがおさまった直後:5分で行う確認
電話やSNSより先に、命・人数・火災・建物・避難経路を確認します。
次の強い揺れへ備える
姿勢を低く保ち、落下物の下へ戻らない。出口を確保し、靴・ヘルメットを準備します。
点呼する
選手、保護者、スタッフを名簿で確認。更衣室、トイレ、受付も声をかけます。
重症を見分ける
意識、呼吸、大量出血、強い痛み、挟まれを優先し、必要なら119へ通報します。
火とガスを確認
煙、焦げ臭、ガス臭、火花、漏水を確認。危険があれば近づかず避難します。
建物を観察
柱・壁の大きな亀裂、扉の変形、天井落下、床の傾き、外壁落下を確認します。
公的情報を確認
津波、火災、避難指示、土砂災害、交通を気象庁・自治体等で確認します。
待機か避難か
建物内が危険なら指定場所へ。屋外が危険なら安全な室内へ。状況で選びます。
一斉連絡
確認済みの人数、待機・避難場所、引き渡し方針、次回更新時刻を送ります。
避難するか、練習会場で待機するか
「外へ出る=安全」「建物に残る=危険」とは限りません。災害の種類で判断します。
| 状況 | 基本判断 | 注意点 |
|---|---|---|
| 津波警報・注意報/強い・長い揺れ | 沿岸・川沿いでは高台や津波避難ビルへ直ちに避難 | 保護者への個別連絡や荷物回収より避難を優先。解除まで戻らない |
| 遠地津波・揺れを感じない場合 | 気象庁の津波予報区と対象市町村、自治体の避難情報を確認 | 揺れがないことを安全の根拠にしない。交通の運転見合わせと長時間待機も想定 |
| 火災・煙・ガス臭 | 風上・安全な方向へ避難 | エレベーターを使わず、炎や煙の中へ戻らない |
| 建物の著しい損傷 | 安全な出口から退避し、再入室しない | 外壁・看板・ガラスの落下範囲から離れる |
| 土砂災害・崖・擁壁 | 自治体の避難情報に従い、危険区域から離れる | 地震後の雨で危険が高まる。崖下・斜面・川沿いを避ける |
| 建物が安全・屋外が危険 | 安全な室内で待機 | 窓・棚・吊り物から離れ、次の強い揺れに備える |
| 交通停止・道路混乱 | 一斉帰宅を避け、安全な場所で情報待機 | 子どもを単独帰宅させない。保護者にも無理な迎えを求めない |
選手・保護者への対応:早く帰すより、安全につなぐ
未成年者の安全は、連絡の速さではなく、確実な所在管理と引き渡しで守ります。
選手へ伝えること
- 「今はここで安全を確認しています」
- 「お迎えが来るまで一人では帰しません」
- 「怖い、痛い、気分が悪いを言ってよい」
- 「次の揺れに備えて靴と荷物を近くへ」
- 「うわさではなくコーチの案内を聞く」
保護者へ伝えること
- 現在の人数と負傷の有無
- 待機場所または避難先
- 迎えを求めるか、待機を求めるか
- 引き渡し時の本人確認方法
- 次の情報更新時刻
安全な引き渡しの6項目
- 引き取り者の氏名と選手との関係を確認
- 登録済みの保護者・代理人か照合
- 本人確認書類または事前に決めた確認事項を使用
- 引き渡し時刻、行き先、連絡先を記録
- 道路・交通・避難情報を伝え、安全な経路を確認
- 未確認の人、子どもだけ、口頭の伝言だけでは引き渡さない
コーチ自身の安全:自己犠牲を防災計画にしない
コーチが無事でいることは、選手の安全を支える重要な条件です。
揺れの最中に立ち続けない
全員を見るために中央へ立つと、落下物・転倒物の危険が増えます。自分の頭を守り、安全な位置から声を出します。
非番のコーチは駆けつけない
道路・交通・活発な地震活動が危険なときは移動せず、安全な場所から連絡、名簿、情報更新を支援します。
コーチの家族連絡も決める
勤務中のコーチが家族の安否を確認できる時間、171の番号、交代条件をマニュアルへ入れます。
長時間を一人で担わない
引き渡しが夜間まで続く場合、近隣スタッフや運営者が交代できる体制を整えます。
できないことを明言する
建物診断、医療判断、避難所運営を教師だけで行いません。専門機関へつなぎます。
記録を残して引き継ぐ
人数、負傷、連絡済み、引き渡し、設備異常、判断理由を時刻付きで記録します。
停電・火災・断水:揺れの後に生じる危険を防ぐ
建物が倒れなくても、電気・ガス・水・トイレの問題で使用不能になります。
電気・再通電火災
避難時に安全に操作できる場合はブレーカーを落とします。復電後は、焦げ臭、煙、異音、破損、浸水を確認し、異常があれば直ちに遮断して消防・専門家へ連絡します。
感震ブレーカー
不在時や避難時にブレーカーを落とせない場合の電気火災対策として有効です。非常照明等が消える影響も含め、建物管理者・電気工事業者へ相談します。
ガス臭
火や電気スイッチを使わず、窓を開けられる安全な状況なら換気し、元栓へ無理に近づかず、ガス会社・消防の指示に従います。
断水
水が流れない状態で通常トイレを使うと詰まり・衛生問題が起きます。携帯トイレへ切り替え、飲料水を清掃に使い切らないよう分けます。
漏水・天井
配管破損で天井材の落下や電気設備への浸水が起こります。濡れた照明・コンセントへ触れず、区域を封鎖します。
夜間照明
スマートフォンのライトだけに頼らず、出口・トイレ・待機場所へ独立した照明を置きます。裸火は使いません。
待機・避難生活:暑さ、脱水、トイレ、車中泊に注意する
夏季の災害では、高温下での避難や片付けも重大なリスクです。地震活動や降雨への警戒と同時に、熱中症を防ぐ運営が必要です。
暑さへの対応
- 涼しい安全な場所へ移動
- こまめな水分・塩分
- 片付けは時間を区切る
- 子ども、高齢者、持病のある人を優先観察
- 頭痛、吐き気、反応低下、ふらつきは運動中止
車中泊・長時間座位
- 水分を控えない
- 定期的に足首・脚を動かす
- 可能な範囲で歩く
- 締め付ける服を避ける
- 片脚の腫れ、胸痛、息苦しさは救急相談
トイレを我慢させない
水分を控える原因になり、脱水や血栓リスクを高めます。年齢・性別・プライバシーに配慮した場所を確保します。
食物アレルギー
「非常時だから少しなら大丈夫」と判断しません。表示を確認し、本人・保護者の情報を優先します。
薬と医療機器
服薬を中断しないよう、薬名・用量・医療機関を確認します。電源が必要な機器は自治体・医療へ早めにつなぎます。
震災後の心のケア:怖がることを「弱さ」にしない
強い反応は、異常な出来事に対する自然な反応である場合があります。急いで元通りにさせません。
子どもに見られ得る変化
- 眠れない、悪夢、音や揺れへの過敏
- 腹痛、頭痛、食欲の変化
- 離れたがらない、幼い行動へ戻る
- 集中できない、ぼんやりする
- 地震の遊びを繰り返す、または話を避ける
- 自責、怒り、涙、無表情
指導者ができること
- 「怖かったね」と感情を否定しない
- 今の安全情報を短く具体的に伝える
- 体験を無理に語らせない
- 参加・見学・欠席を選べるようにする
- 生活リズムを徐々に戻す
- 変化が続く場合は保護者・専門職へつなぐ
いつもの教室ではない場所で、地震が起きたら
大会主催者と施設管理者の役割を尊重しつつ、所属教室として選手の安全確認と保護者連絡を行います。
大会の直前・演技中
演技や音楽を止め、選手へ短く安全確保を指示します。コーチは会場スタッフの避難誘導を確認し、自己判断でフロアへ戻りません。
公共体育館の避難誘導
競技団体の集合場所と、施設が定める避難場所は異なる場合があります。揺れが収まったら施設管理者の情報を確認し、所属チーム全員の点呼を行います。
遠征中の交通停止
バスや電車が止まった場合、子どもだけで別経路へ移動させず、運行事業者の情報と宿泊施設・保護者への連絡を確認します。
沿岸部の大会と津波
大きな揺れや長い揺れ、津波警報・注意報がある沿岸地域では、集合写真や手具の回収より、指定された高台などへの避難を優先します。
選手が分散している場合
トイレ、控室、観客席、別のアップ場にいる選手を確認します。むやみに一人で探し回らず、施設職員や大会本部と情報を共有します。
大会再開・参加判断
主催者が続行しても、帰路の交通や選手の不安、引率体制に問題があれば所属教室として参加を見送ることがあります。安全を優先した欠席を責めない方針を共有します。
休講と再開:外見ではなく、複数の安全条件で決める
練習を再開できることと、再開すべきことは同じではありません。
| 領域 | 確認項目 | 再開を見送る例 |
|---|---|---|
| 地震活動 | 気象庁の地震活動の見通し、津波、雨・土砂情報 | 強い揺れが続く、避難情報がある |
| 後発地震情報 | 情報名・キーワード・対象地域・期間、政府・自治体の呼びかけ | 事前避難対象地域、直ちに避難できない運営、保護者への周知前 |
| 建物 | 構造、壁・柱、天井、外壁、階段、非常口 | 大きな亀裂、傾き、落下、扉の変形、専門確認前 |
| 練習会場設備 | 鏡、手具棚、照明、スピーカー、棚、空調 | 固定の緩み、異音、ひび、落下のおそれ |
| ライフライン | 電気、ガス、水、トイレ、通信、非常照明 | 異臭、漏水、トイレ使用不能、停電・猛暑 |
| 移動 | 道路、鉄道、送迎、周辺落下物 | 保護者・選手の安全な往復が確保できない |
| 人員 | コーチ自身と家族の安全、必要スタッフ、救護 | 一人運営、疲労が強い、連絡担当が不在 |
| 心身 | 選手・保護者の不安、地域の生活状況 | 参加を急がせる状況、避難生活中、睡眠不足 |
発災当日:原則として休講
安否確認、建物・周辺・交通の確認を優先。再開時刻を約束しません。
翌日以降:専門確認と地域状況
強い揺れを受けた場合は、管理会社・所有者・専門家の点検を優先。スタッフ全員の安全も確認します。
再開初期:短時間・低負荷・自由参加
ジャンプ、リフト、ポワント、器具使用を急がず、避難説明と安全確認から始めます。
通常化:振り返りを反映
訓練、備蓄、連絡、設備固定、引き渡し記録を見直し、マニュアルを更新します。
保護者への連絡文例
長文より、確認済みの事実と次の行動を短く伝えます。
新体操教室の地震・震災対策チェックリスト
印刷し、確認日・担当者・改善期限を書き込んで使用してください。
建物・設備
- 鏡の施工・固定状態を確認した
- 移動式ミラーを固定できる
- 手具棚・可動式器具の転倒・滑走対策をした
- 照明・スピーカーに落下防止がある
- 棚・ロッカー・受付家具を固定した
- 重い物を低い位置へ移した
- 非常口と複数の避難経路を確保した
- ブレーカー・ガス元栓の位置を表示した
- 感震ブレーカーを検討した
- 管理会社・所有者の緊急連絡先がある
- 手具棚・フープ・クラブの落下防止を点検した
- 体育館の吊り下げ式照明・ゴールの危険を施設管理者に確認した
- 公共体育館・学校体育館それぞれの避難ルートを確認した
- 大会主催者と施設管理者の避難誘導方針を確認した
- 遠征先の宿泊施設・避難場所・ハザードを確認した
- 大会中に選手が分散した際の点呼方法を決めた
- 安全な大会参加見送り・途中中断を認める方針を共有した
選手・保護者
- 最新の出席名簿を紙でも保管した
- 保護者の複数連絡先がある
- 代理引き取り者を登録した
- 引き渡し本人確認の方法を決めた
- アレルギー・持病・服薬を確認した
- 単独帰宅させない基準を共有した
- 連絡不能時の待機方針を共有した
- 公式情報発信先を保護者へ知らせた
- 後発地震情報発表時の連絡文を用意した
備蓄・通信
- 最大在室人数を把握した
- 水・食料を最低3日分計算した
- 携帯トイレを人数分備蓄した
- 厚底靴・手袋・ヘルメットがある
- ライト・ラジオ・電池がある
- 複数種類の充電ケーブルがある
- 生理用品・衛生用品がある
- 夏・冬の季節用品を入れ替えた
- 備蓄を複数場所へ分散した
- 171・web171の基準番号を決めた
- 171・web171を体験利用日に試した
訓練・運営
- 緊急地震速報の音を使って訓練した
- 鏡から離れる安全スペースを決めた
- 更衣室・トイレを含め点呼した
- 津波・火災・土砂の別経路を確認した
- 揺れのない遠地津波を想定して訓練した
- 南海トラフ・北海道三陸沖の情報発表時の基準がある
- 大会会場の待機場所・充電・交通対応を確認した
- 責任者不在で訓練した
- コーチの家族連絡・交代条件を決めた
- 休講・再開基準を文書化した
- 訓練後にマニュアルを修正した
新体操の地震対策について、よくある質問
練習中の地震、帰宅、休講、再開など、現場で迷いやすい質問に短く答えます。
新体操の練習中に地震が起きたら、最初に何をしますか?
まず演技や手具の動きを止め、鏡・窓・照明・棚などから離れ、頭と首を守ります。揺れている最中に出口へ走ったり、荷物を取りに戻ったりせず、揺れがおさまってから点呼、負傷、火災、建物、避難情報を確認します。
地震の揺れがおさまったら、選手をすぐ帰宅させてもよいですか?
道路、交通機関、火災、津波、周辺の落下物などが安全と確認できない場合は、急いで帰宅させません。未成年者は安全な場所で待機させ、事前に定めた本人確認を行って保護者・登録済み代理人へ引き渡します。
南海トラフ地震臨時情報が出たら、新体操教室は必ず休講ですか?
全国一律に休講と決まる情報ではありません。情報のキーワード、対象地域、自治体の呼びかけ、津波避難に必要な時間、建物、交通、クラス年齢などを確認し、通常開催・短縮・延期・休講を判断します。事前避難対象地域では自治体の指示を優先します。
2026年10月現在、南海トラフの最新評価はどうなっていますか?
気象庁が2026年10月7日に公表した第110回の定例評価では、平常時と比べて大規模地震の発生可能性が相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。ただし「平常時」も切迫性の高い状態とされています。
南海トラフの「60~90%程度以上」は、今すぐ地震が起きるという意味ですか?
いいえ。地震調査研究推進本部が示す「今後30年以内」の長期評価の一つです。計算方法によって「20~50%」という評価もあり、いずれも特定の日付を予測するものではありません。月例の観測評価で特段の変化がないことと、長期的に備えが必要なことは両立します。
東京都内の新体操教室は、首都直下地震への備えを何から見直すべきですか?
建物と鏡・照明などの固定、全員の点呼とけがの確認、交通停止により帰れなくなった未成年者の待機、保護者への安全な引き渡しを優先します。大会会場・レンタル練習会場では施設管理者と役割を確認してください。国の基本計画は2026年6月12日に見直されています。
北海道・三陸沖後発地震注意情報とは何ですか?
日本海溝・千島海溝沿いで大きな地震が発生した後、さらに大きな後発地震への注意を促すための情報です。地震発生を断定する予知情報ではなく、発表時は日頃の備えを再確認し、すぐ避難できる態勢などを原則1週間続けます。
新体操教室の防災備蓄は何日分必要ですか?
まず最大在室人数を把握し、従業員の3日分を基礎に、選手・保護者・きょうだい・見学者が一時待機する可能性を上乗せして考えます。家庭向けの公的な備えでは最低3日、できれば1週間程度が示されています。
地震後、いつから新体操の練習を再開できますか?
震度だけでは決めません。地震活動、建物、鏡・照明・手具棚、電気・ガス・水、避難経路、交通、必要なスタッフ、選手・保護者の心身状態を確認し、不明点がある場合は休講します。再開初期は短時間・低負荷・自由参加から始めます。
災害用伝言ダイヤル171・web171は平時に練習できますか?
できます。体験利用日は毎月1日・15日、正月三が日、防災週間、防災とボランティア週間などです。教室で使う基準電話番号と、誰が伝言を更新するかまで平時に決めておくと実務で使いやすくなります。
大会会場で地震が起きたら、選手は誰の指示に従いますか?
まず自分の頭と体を守り、揺れがおさまってから大会主催者・施設管理者の避難誘導を確認します。所属教室のコーチは選手の点呼と保護者への連絡を担当し、避難の妨げにならないよう連携します。
手具や衣装を練習会場に置いてきた場合、取りに戻ってもよいですか?
安全が確認できない建物には戻りません。手具や衣装より人の安全を優先します。再入場は施設管理者の安全確認後に判断します。
参考にした公的・公式情報
- 地震調査研究推進本部「南海トラフで発生する地震・長期評価」
- 気象庁「2026年10月7日 南海トラフ地震関連解説情報」
- 地震調査研究推進本部「2026年1月 長期評価による地震発生確率の更新」
- 地震調査研究推進本部「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版一部改訂)の手引き」
- 内閣府「首都直下地震対策」
- 気象庁「南海トラフ地震に関連する情報」
- 気象庁「南海トラフ地震について」
- 内閣府「南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!」
- 気象庁「北海道・三陸沖後発地震注意情報について」
- 気象庁「北海道・三陸沖後発地震注意情報の発表基準と情報発表の流れ」
- 内閣府「北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン」
- 内閣府「帰宅困難者等対策」
- 内閣府「大規模地震発生直後における建物の緊急点検に係る指針」
- 気象庁「緊急地震速報を見聞きしたときは」
- 気象庁「緊急地震速報(警報)及び(予報)について」
- 気象庁「緊急地震速報の発表基準の変更について」
- 気象庁「長周期地震動について」
- 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」
- 内閣府「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」
- NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用」
- NTT西日本「災害用伝言板(web171)」
- 文部科学省「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」
- 文部科学省「子供の心のケアのために(保護者用)」
- 厚生労働省「被災地における熱中症予防について」
- 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」
- 総務省消防庁「感震ブレーカー」
※本記事は練習会場・教室運営の一般的な防災情報です。現地の避難指示、建築・消防・医療上の判断に代わるものではありません。緊急時は119・110、自治体、施設管理者、医療機関等の指示を優先してください。防災情報や制度は更新されるため、定期的に公式情報を確認してください。
安全は、地震が起きた瞬間ではなく、今日の準備から始まります
選手の未来を守るためには、技術指導だけでなく、建物、設備、連絡、引き渡し、心のケア、コーチ自身の安全まで学ぶ必要があります。新体操安全コーチ資格では、経験や勘だけに頼らず、危機を想定し、チームで備える指導環境を考えます。