未来の身体を守るために安藤 紗由莉先生|SEED新体操教室
審美性を求める競技だからこそ、「細いほど良い」という価値観から距離を取り、成長期の身体と心を守る知識が必要になる。「摂食障害への理解を深める」を学んだ安藤先生が、自身の経験と現在の指導を重ねながら考えたことをご紹介します。
みなさま、こんにちは! 新体操安全コーチ資格事務局です。
このコラムでは、今年からスタートした「新体操安全コーチ資格」を受講してくださった先生方からの、各講義のご感想や現場での気づきをシリーズでお届けしてまいります。
今回も、SEED新体操教室にて子どもたちの指導にあたられている安藤紗由莉先生のご感想をご紹介いたします。
本資格でどのような実践的な知識を学ぶことができるのか。現在受講を迷われている方も、ぜひ安藤先生のリアルな声をご参考になさってみてください。
審美性を求められる競技で起こりやすい体重・体型への過度な意識を見直し、成長期の栄養、心の問題、周囲のサポート、予防の重要性について考える講義です。安藤先生には、受講後に感じたこと、これまでの振り返り、現場への活かし方、受講前後の変化、生徒へ伝えたいことの5つの視点からお答えいただきました。
安藤紗由莉先生が学んだ「摂食障害への理解を深める」
新体操は、美しさを競う競技です。その一方で、「細い方が良い」「体重は軽い方が良い」という価値観が強くなりすぎれば、成長期の子どもたちの身体と心へ大きな負担を与える可能性があります。
安藤先生が今回の講義を通して改めて向き合ったのは、摂食障害を起こしてから対応するのではなく、起こさないための環境を指導者と保護者がつくることの大切さでした。
未来の身体をつくる今を、大切にしてほしい。安藤紗由莉先生|受講後のご感想より
- お名前
- 安藤 紗由莉
- 所属
- SEED新体操教室
- 活動
- 子どもたちへの新体操指導
- 今回の講義
- 摂食障害への理解を深める
講義を受けて見えてきた、5つの視点
講義を受けて感じたこと
新体操は審美を競うスポーツであるために、選手は痩せていなければならないという固定概念があり、それは体重が軽くなければ演技の強度に耐えられなかったり、少し体重が増えただけでできなくなる技があったりと、痩せていることが正義となってしまう理由もあると思われます。
しかし、その限度がなく、細ければ細い方が良いという体重の数グラムを追求する指導や、選手自身も追い込まれて食べ物と極端な向き合い方をしてしまう状況は、簡単にはマインドをリセットできない状態につながってしまいます。
摂食障害を救うには食事方法の改善だけでは済まず、多方面からのケアが必要であり、本人の意識の改善や周りのサポートなど、かなり時間をかけて解決していかなければならないため、そもそも摂食障害に陥らないようにすることが大切だと思いました。
親や指導者が正しい知識を持ち、安全で健康的な生活を送ることができるように子どもをそばで見守ることで、未然に防ぐべきだと考えました。
自分のこれまでを振り返って気がついたこと
私は小学校3年生の頃から新体操で計測があったため体重と向き合い、そこから辞めるまで悩まない日はありませんでした。身長が伸び続けている成長期でも体重が増えると太っているという認識で、小学生でもダイエットに強い関心があり、テレビや本で話題となっているものには沢山手をつけました。
友達と情報交換をし、一緒に痩せようと仲間を作ってモチベーションを上げ、レッスンの厳しさよりも毎日の体重測定に怯えながら生活をしていました。幸い私も周りも摂食障害の大きな症状は見受けられませんでしたが、食べてはいけないという制限が余計に食べ物への執着につながり、闇雲な努力は数字にも見た目にも表れていなかったように思います。
筋肉量が落ちたからかもしれませんが、何の制限もしていない現在の方が高校生の時よりも体重が軽いのが虚しく、あの時もっと根拠ある食事やトレーニングをできていたらと思わずにはいられません。
成長期の体重変化を単純に「太った」と捉えないこと、体重や見た目だけを評価軸にしないことは、摂食障害を予防する環境づくりの重要な一歩です。指導者の何気ない言葉も、子どもの身体観や食行動に長く影響する可能性があります。
現場でどのように活かせそうか
現在携わっている指導現場では、体重や見た目に関して一切口出しをしていないため、あまり自分の教え方を改める部分はありませんが、講義にも注意点として挙げられていたように、SNSの影響というのは私の時代と違って幼少期から受けていそうです。
私は新体操が上手になるためには痩せなければならないから痩せたかったという理由ですが、生徒は画面の向こう側にいるキラキラした人達に憧れて、芸能人やインフルエンサーを標準として体型を気にしているように感じます。
女性アスリートの三主徴にもあるように、十代は成長期の今だけでなく数十年後の未来の自分の体を形成している段階なので、痩せ過ぎにも注目していきたいと思います。
また、私の生徒の細さの原因が筋肉量の少なさにもありそうで、皆フラフラしており、瞬発的な動きや体を支える動きに弱いです。健康的な食事を提供する機会はない分、適切なトレーニングで必要な筋肉をつけて、長い目で見て理想的な体づくりを目指していきたいです。
受講前と受講後で変わったこと
摂食障害は自分が経験することなく現役を終えたため、コーチングしていく上であまり関心を持っていなかった分野でした。一番の原因が心にあり、それはアイデンティティを形成している子ども達の近くにいる存在の一人として、正しい知識を持って取り組まなければならないテーマだと思いました。
新体操講師は、時にはそのきっかけを与えかねず、毎週見て体型の変化を感じ取れるからこそ、発言にはより責任を持って気を付けていきたいです。
細いばかりが良いとされていた業界全体の流れも少しずつ改善されているそうで、ダンサーの健康にとって慢性的なカロリー制限は有害とみなされるようになったことは、審美性を求める人達の命を守る提言となり、私も賛同して指導にあたりたいと思います。
子どもの身体観や未来に影響するかもしれない。安藤紗由莉先生|受講後のご感想より
生徒に伝えたいと思ったこと
今の小学生や中学生は体型に限らず容姿にとても敏感で、何かと可愛さ、美しさに囚われがちです。その考えを一蹴する必要はないとは思われますが、子どもの頃にしか蓄えられない健康要素があり、食べることからしか得られないエネルギーによって皆の成長は促進されているということを知ってもらいたいです。
見た目で幸福を感じられるのには時限があり、それよりも心身共に健康であることの方が何倍も幸せであることを、私が体現できたらと思います。
また、コンクールに臨むメンタルについては、そのような機会がなくとも人生における課題のようでもあり、毎日丁寧に積み重ねた自分への信頼が自信になるという言葉に感銘を受けましたので、私も同じように自分に言い聞かせ、生徒にも伝えていきたいです。
「細さ」ではなく、子どもたちの未来の身体を守る
安藤先生、今回もご自身の過去の経験を率直に共有していただき、心よりありがとうございます。
小学生の頃から体重測定に向き合い、成長期であっても体重が増えることに不安を感じながら過ごした経験は、審美性を求める競技における「細さ」の価値観が、子どもの身体観へどれほど深く入り込むことがあるのかを考えさせられます。
摂食障害は、食事だけの問題として捉えることはできません。だからこそ、症状が表れてから対応するのではなく、子どもが自分の身体を否定しなくて済む環境を、周囲の大人がつくることが重要です。
現代では、競技現場だけでなくSNSやルッキズムの影響もあります。指導者が体重や見た目だけを評価せず、成長に必要なエネルギー、適切なトレーニング、身体の変化を長い時間軸で考えることは、今と未来の健康を守ることにつながります。
「心身共に健康であることの方が何倍も幸せ」。安藤先生が生徒たちへ届けたいこの言葉は、新体操の美しさを否定するものではなく、美しさを支える土台として健康を大切にする、新しい指導のスタンダードを示しているように思います。
毎日の丁寧な積み重ねによって自分への信頼を育てること。そして、食べること、成長すること、自分の身体を大切にすることを肯定できる環境をつくること。これからも新体操安全コーチ資格では、子どもたちの現在だけでなく、その先の人生まで見据えた安全な指導を考えていきます。
次回のコラムでも、受講生の皆様のリアルな声と、学びを通じた指導現場のアップデートをお届けしてまいります。「新体操安全コーチ資格」に興味をお持ちの先生方、今後のコラムもぜひご期待ください。
技術だけでなく、子どもの未来の健康まで考える
新体操安全コーチ資格では、身体・心・栄養・摂食障害・ハラスメント・コーチングなど、子どもたちを安全に支えるために必要な視点を専門家から体系的に学びます。今の指導を見直したい方、これから指導者を目指す方もオンラインで受講できます。